お迎え

 新幹線のホームに降り立った時です。 

横をまん丸の白いウサギが通り過ぎたように思いました。 

見ると、髪の毛をおさげにした白いモコモコのコートを着た小さな女の子が弾むように走り抜けていきます。 

走る方向に目をやると、背の高い男性がニコニコしながら立っています。 

女の子は一度私の後ろにいる女性を振り返り、嬉しそうに照れた笑い顔をして、 

「パパだ!」とはしゃいだ声を出してドンドン駆けていきます。 

パパの元にたどり着くやいなや、パパにジャンプして飛びついていきました。 

パパは大きく両手を広げて、小さな女の子を軽々と抱き上げ、「おかえり!」。 

 とても微笑ましい風景でした。 

きっとママの実家にでも行っていたのでしょう。新幹線のホームにパパがお迎えに来てくれて嬉しくて駆けだした瞬間に立ち会ったのですね。 

『お迎え』はとても嬉しいものです。 

家だって、いつもどんな時も黙って『お迎え』してくれています。 

時には、感謝の気持ちを込めて、『ありがとう』を伝えたいですね。 

バトン

運動会の花形種目といえば、やはり、『クラス対抗リレー』ではないでしょうか。 

もちろん、『玉入れ』や、『障害物競争』やなど、いろいろありますが、走るが滅法得意な生徒が、1年生から順に上級生にバトンを渡し、クラス対抗で行うリレーは、胸踊る種目でした。 

子供の運動会では、お母さん達が6年生の男子に、 

「キャァ!!! 〇〇く〜ん!!! 頑張って〜!!!」 

と、黄色い声を上げて、もう超アイドル! 

「キャァ!カッコいい!行け〜!!!」 

確かにカモシカのような長い足と、大人になりかけた精悍な顔立ちにお母さん達の胸が踊るのも無理はありません。 

1年生から、順にバトンが渡され何と言っても最高にシビレルのは、後輩達順位が悪かったのに、上級生達が猛然とその差を縮め、息つまる接戦を展開するあたり、本当に思い返してもワクワクします。 

バトンが渡されるたびに、託される思い。 

住まい造りと同じですね。 

私たちから設計者へ。そして現場監督と、職人さん達へ。 

最後のフィニッシュはみんなでテープを切り、笑顔で万歳をする。 

そんな家づくりをしたいものですね。 

バトン

歩くこと

 不覚にも、左足の親指の骨を骨折してしまいました。 

若い頃ならよろけても踏ん張れたのに、『あれっ?』と思うほど踏ん張れず、というより、他の支えようとする部分のスピードが緩慢で、サッと動いて支えられないのです。 

身体がゆっくりと倒れ込んでしまうのを頭の中で『あれっ?』って思ってしまっている自分に気づいて愕然としています。 

病院で見ていただくと、「折れていますね〜。1ヶ月かかると思いますが、ギプスで固定すると後が大変だし、湿布と痛み止めとで頑張ってみますか?  

とにかく歩かないようにして、歩くときは先の広いゆったりした靴にしてくださいね。」ということになりました。 

松葉杖をお断りして、山歩き用の杖を使ってゆっくりゆっくり歩きます。 

ペンギンの散歩のようにペタペタと歩くと痛み止めも効いているのか何とか歩くこともでき、仕事もどうにかできています。 

思いました。 

ゆっくり丁寧に歩いてみるのもいいなぁと。 

おばあちゃんになったら、こんな風に歩いてみようかなぁ。 

セカセカと急ぎ足で歩くこともできないだろうし、 

杖を上手に使ってゆっくり丁寧に歩く。 

景色も街の様子もよく見えるようになります。 

歩く速度がゆっくりだと、時間もゆっくり流れます。 

『スローな暮らし』の第一歩は、ゆっくり歩くことから始まるのかもしれません。 

編み物

 それは軽やかで可愛らしいイエローでした。 

軽やかな色合いなのに、1センチ角に編まれたモチーフがまるでモザイクタイルのように様々な色合いを織り交ぜながら出来上がったとてもステキなストールでした。 

1センチ角のモチーフをよくよく見ると、その編み込まれている糸の細いこと! 

細い糸の色違いを撚り合わせて1本の糸にして編んでいるのです。 

約2年近くかけて出来上がったそのストールは、まさに芸術品。 

じっと見ていると息を止めて見入っている自分がいました。 

お裁縫はてんでダメ。編み物なんてもってのほか。 

だからこそ、でしょうか。本当に見入ってしまいました。 

『発想』 

『デザイン』 

『時間』 

『手間』 

『根気』 

気の遠くなるような長い作業は、 

『愛情』 

に支えられているのですよね。 

家も同じですね。 

『家を建てると決める』 

『設計の打合せ・デザインの打合せ』 

『時間』 

『職人さん達の汗』 

『出来上がりの検査』 

どれも 

『愛情』 

に支えられているから、家族が幸せになれるのだと思います。 

ふせん

打合せの中でたくさんの資料が出され、その中のあちこちにこちら側で解決しなければならない宿題が混ざっていることがよくあります。 

そんな時は、うっかり忘れないように、赤ペンで大きく「忘れないこと!」「○○さんに伝えること!」と書き込んでいました。 

それでもたくさんの宿題の個所のうち、1カ所か2ヶ所逃してしまい、うっかり忘れてしまう。そんな失敗がよくありました。 

そんな時とても楽しそうに見える書類の束に出逢いました。 

パラソル色、ビビットカラー、可愛らしくて 

ウキウキするようなカラーが書類の山の中にひょっこりあちこちに頭を出しています。 

思わずつまんで開くと、そこには忘れてはいけない宿題が書かれている。ふせんを付けただけなのに、なんて可愛らしい♫思わず顔がほころんでしまいます。 

カラフルな細いシャープなふせんもあれば、どっしりと書き込めるお相撲さんのようなふせんもあります。 

ふせんはずっと昔からあったものですが、カラフルに、そして機能も進化し、仕事周りをとても楽しくさせてくれています。 

おうちの打ち合わせの図面に、気になる個所や、思いついたことがある個所にカラフルなふせんを貼ってみませんか? 

打合せ、楽しくなりますよ♪ 

未来の住まい

 「やっぱり近くて、日当たりが良くて、それからできれば角地がいいの。あっ、もちろん見晴らしのいい所がいいわぁ。 

それからね、最近はデザインが豊富でしょう?おしゃれなデザインにしたいのぉ♪」 

 これ、お墓のお話です。 

夏休みにお墓参りに行かれた方も多いと思います。 

不思議ですよね。こういう会話を聞いていると来世も、現世も同じなのですね。 

「できたら、お隣は素敵な方がいいわぁ~。」 

そうでしょうとも。 

でもね、一番大切なのは、ちゃんとお掃除をしておくこと。これは、現世も来世も変わりませんね。 

お掃除が行き届いていること。 

お花がいつもお供えしている事。 

それはいつも誰かが手を入れて、手を合わせて、時空を超えて対話をしている証拠です。 

鹿児島の指宿では、色とりどりのお花がいつも絶えず、いつもお墓でみんなでお弁当を広げたりしてご先祖様との対話を楽しんでいるということです。 

なんだか、嬉しくて、楽しい話だと思います。 

人の一生は、時空を超えるのですね。 

未来の住まいも、デザインしたくなりました。 

お花

おきがる手紙

 このところ、便箋と封筒を使うことがめっきり少なくなりました。 

殆どメールですましてしまうようになっています。 

お礼状も、お客様から先にメールで届いてしまうと、手紙が届く方が遅くなってしまい、メールでお礼をした上でお礼状を書くというようなこともあったりします。いや、お礼状を書いたあと、メールでカジュアルなお礼を返信し、その後ポストに入れるというような・・・。 

お礼状はちょっと改まって書いていて、それが後で到着しちゃうので、どうしてもちぐはぐになってしまいますよね。 

さて、最近、コロナで実家に帰ることができないこともあり、週に一度程度、母に手紙を書いています。 

今までやっていなかったことでもありますし、書く内容も本当につまらないことしかないのですが、たまにはこういうのもいいかなと思っています。 

84円切手を何枚か買っておいて、気がむいた時にササっと便箋2枚程度。 

文字の下手なことや、文章の流れなんておかまいなしの、普段どおりにしゃべっているかような脈略の気のおけない「お手紙」です。 

思えば坂本龍馬さんも、こんな感じで旅先からお姉さんに手紙を書いていたのかな?なんて、ユーモアに富んだあの手紙を思い出したりしました。 

(もちろん私にはそんな気の利いた手紙は書けません。) 

家にいる時間が多くなっているこのタイミングを活かして、手紙を書いてみるのもいいのではないでしょうか? 

文字を忘れている自分に愕然とするというおまけ付き?です。(涙) 

キャリアの差

家の中の暮らし方が随分と急速に変化していますね。 

特に家電製品の進化には目を見張るものがあります。 

掃除機は、 

しゃべるし、折れ曲がって家具の下もスイスイと、光るし、勝手に掃除してくれるし・・・。 

冷蔵庫は、 

瞬間的に凍らせるし、解凍するし、野菜の鮮度を保ってくれるし、氷も勝手に作ってくれる。 

洗濯機は、 

時間通りに洗ってくれるし、乾燥もしてくれるし、洗剤の分量も勝手に測ってくれる。 

圧力鍋が欲しいなと思っていたら、作りたい料理のレシピがすでにセットされていて、教えられた材料を放り込んでスイッチを入れたら、10分後には肉じゃがや、カレーなんかができてしまうらしい・・・。 

もしかしたら、この先歳をとったら、もっと暮らしやすくなっていってる? 

なんて思ってしまいます。 

最近はスイッチポン!の簡単設定だし、最初理解しちゃえばあとは意外と簡単。 

使わない機能はずっと使わないままでしょうけど、自分なりに使える機能だけ使えばいいですもんね。 

掃除の仕方、 

部屋は丸くはかない。畳は目に沿って。隅々まで目を凝らして埃を掃き出す。 

料理の下ごしらえの仕方、 

料理を作り始める時間を計算して、解凍の方法と仕方を適切に選択する。 

洗濯の仕方、 

下洗いをしてから選択。つけ置き洗いしたほうがよいものはそのように選別する。 

煮物のコツ、 

母の味を守るべく、ちょこちょこ味見をしながら味調整。その塩梅がわかるようになるまでが大変。 

な〜んて、多少は私にも掃除、選択、料理のキャリアはあるなんて思っていたけれど、 

キャリアの差は、逆に家電の方に軍杯が上がりそうです。 

将来、歳をとっても暮らしやすくしておく工夫、練習も兼ねて今から始めておくのもいいと思います。 

空からの景色

車で走って見た景色を、空から見るのも楽しいものですね。 

飛行機の窓から離陸の際や着陸の際、雲の下に降りたあたりから陸地が見えてくるとぐっと目を凝らして見てしまいます。 

「地図の形どおりだ・・・。」と感心してしまいますが逆ですね。地形通りに書かれている地図に感心するべきでした。 

知っている建物を空で見つけた時はとても嬉しくなります。 

「ねぇ、見て見て♪」 

(と、隣の席に言っても小さな窓から眼下に広がる景色は窓際の席とそうでない席とでは見える範囲が違うようで、見えた見えないで小さくもめてしまうことがありますが・・。) 

その建物はマッチの先ほどに可愛らしく、超リアルな模型を見るようです。 

庭も見えるし、隣の家も見えます。 

毎日の暮らしの様子を思い浮かべると、ちょっと微笑ましくなります。 

明日も元気で生き生きといきたいですね♪ 

お風呂時間

暑くて汗をかいた日は、家にたどり着くとすぐに汗を流したくなります。 

気持ちはそうなのですが、 

夕食の準備や片付け、洗濯物、明日の用意などやるべきことが山のようにあり、全てを終えて、「やれやれ・・・。」とソファーに腰を下ろすともういけません。 

ついつい時間が経過してしまい、さっぱりしたお風呂上がりの気持ちよさを恨めしく思い返したりするようになります。 

一人暮らしなら好きなようにできていいのですが、家族を持つとそうもいきませんね。 

たまには横着をして、テイクアウトの冷え冷えが美味しい料理を持ち帰って冷蔵庫にポン。 

そしてすぐに子供と一緒にドブン!とお風呂に入りましょう。 

お風呂時間は子供の今日の様子を聞くおしゃべり時間に変わります。 

1日の報告に子供のおしゃべりは止まりませんね。 

シャンプーで頭の髪をキューピーさんにして遊んだり、それが目に入ったと騒いだり、石鹸の泡でソフトクリーム作りに励んだりと、子供と一緒に入るお風呂時間は体力勝負。 

それでもお風呂から上がると身も心もスッキリ! 

汗をみんなで流した後は、冷え冷えの美味しい料理をお皿に移して、 

「いただきま〜す!」 

デザートは美味しいアイスクリーム! 

ママは特別にビールをプシュッ!!! 

お風呂時間も終わって、食事も終わると、後の時間が少し長くなったようでゆったり過ごせます。 

子育て中のことを思い返すと、私もたまにはこんなふうにお風呂時間を過ごせばよかったと思います。帰宅と同時にまずは食事の支度!とすぐにエプロンを着けてキッチンに立っていましたから。(笑) 

そういえば最近、テイクアウトのメニューも豊富になりましたし、宅配サービスも充実してきました。 

時には夕食を作らなくてもなんとかなるようになって、働くお母さんには嬉しい限りです。 

パパがリモートで自宅で仕事していれば、子育ては相当に楽だろうなぁと想像しました。 

パパさえわがままを言わなければねぇ〜。(そんなに甘くないかも?)