「針に糸を通してくれる?」 

ちょちょいのチョイで、糸を通して手渡すと 

「ありがとうね〜。」 

と祖母は喜んでくれる。 

一番簡単で、しかも身体を動かさなくていい、割のいいお手伝いとして軽くやっていた幼い頃を懐かしく思い出します。 

なんでこんな簡単な事を頼むのかなぁと思っていました。 

優しい祖母だから、わざと簡単なお手伝いを私だけに言いつけてくれるんだと思っていました。 

・・・私が老眼になるまでは・・・・。 

家中に眼鏡が置いてあって、頭の上に乗せた眼鏡を捜している祖父に吹き出してしまったり、本当に罪な事をしていました。 

身体の身体能力は知らないうちに落ちてしまいます。 

もちろん維持管理に気を付けて、そのへんの若者より筋肉質で体力のあるご年配の方はたくさんいらっしゃいます。(怠惰な生活をしてしまっている私なんぞは当然その足元にも及びません。) 

それでも、視力、聴力がゆっくりと落ちていくのは仕方のない事ですね。 

家の中の様々なものが便利になり、直感で動かせるようになるのは凄いことです。 

でも、視力、聴力が落ちた時の事をもう少しわかってもらえたらと思うことも多々あります。 

「小さくて読めない!」のコマーシャル、祖母が見ていたら、 

「そのとおり!」と声を上げると思います。左手に針をかかげて。 

バリアーフリーの本当の意味をもう一度深く考えてみたいなぁと思います。 

糸通し