小さな景色

 美しい景色に出逢いました。 

日本文化的景観にもなっている場所の一部です。 

思わずうっとり見とれてしまいました。 

山あい、川のせせらぎ、風の流れなど、歴史ある景観をつかさどってきたことを感じる景色です。 

思わず心に浮かんだ家は、その景色を取り込み、また家の中からは景色を額装するかのようなものでした。 

考えてみれば、家の中にも小さな景色はありますね。 

日本の家屋は、そうした小さな景色を庭に見立てたり、小さな場所を見せ方を工夫することで大きく見せる知恵に長けていると思います。お手本がたくさんあるということでもあります。 

以前お世話になった旅館はその工夫が随所にあり、歩くたび退屈しない空間になっていました。決して広くはない空間を、小さく切り取り、見せ方を工夫して見せているんですね。 

例えば、お風呂の湯船から見えるところだけに小さな庭風のしつらえをして見えるようにしていたり、廊下の低い部分に小さな庭のしつらえをして廊下を広く見せながら、廊下さえも庭に面した回廊のように仕立てられていました。 

廊下から見える小さな庭に椿の花びらを落としておられたのですが、お掃除をされる為に入られた庭師さんの足がとても大きく感じられ、そのことで逆に庭の小ささがわかったくらいです。 

家から見える景色は、毎日の景色でもあります。もう少しバージョンアップさせることを考えて工夫すると、我が家の知らなかった魅力を再発見するかもしれません♪ 

小さな景色

日傘

 近年この季節になると、日傘が目立つようになりました。 

20年前は、こんがり小麦色の夏肌が人気だったような気がします。 

昨今は、日焼けしない白い肌が人気なのでしょうか。 

 昔の小説の挿絵には、夏にはよく日傘をさした女性の後ろ姿があったように思います。 

母もそうでしたが、日傘は、麻地のようなざらざらとした涼しげな生地で、おおむね、白っぽい生地が多かったと思います。 

ほんのり、空色、ほんのり桜色・・・・といったように。 

 最近の日傘は、黒、紺、外はシルバー、中は黒・・・とか、紫外線対策の色遣いがおおいようです。 

中には、雨用と日傘が1本で大丈夫という兼用型もありますね。 

でもなぁ・・・・・。 

日傘というと、どうしてもあのざわざわとした感じと、白い生成りの色合いが頭に浮かんでしまいます。 

蝉の声と、日傘、朝顔と、蚊取り線香。 

 古いでしょうか・・・。 

日傘

袖擦りあうも多生の縁

 小さな町の電車に乗りました。 

各駅停車のゆっくり走る電車です。 

利用者は、学生さん、子ども連れのお母さん、 

買い物袋を抱えたおじいちゃん、おばあちゃん。様々です。 

窓際の席に座り、ぼんやりと窓の外を眺めていました。 

「ちょっとごめんなさいね。」 

大きな買い物かごを下げたおばあちゃんがお向かいに座り、その横にもうひとり。私の横にもうひとり。 

3人は、にこにこと話を始めました。 

「私ね、折紙を教えているんですよ。」 

「へぇ~。どこで?」 

「○○公民館とかで。いろいろと今まで賞をもらっていてね、頑張っているんですよ。 

もう年ですけど・・・。(笑)。 

こう見えて72歳なんですよ。」 

「でも肌が艶々よねぇ~。」 

賑やかなおしゃべりが続いた後、駅に到着。 

一人の方が、 

「あ~、楽しかった。どうもお邪魔さまでした。(私に向って)うるさかったでしょう?ごめんなさいね。」 

 列車で隣に座ったご縁だけで、こんなにも楽しい一駅の旅ができる先輩たちは素敵です。 

お年を重ねた方ほど、列車から降りる際、 

「おさきに。」と声をかけられます。 

日本のいいところ、見習いたいと思いました。 

電車

お弁当箱

コロナの影響もあって、お昼ご飯に困るようになりました。 

慌ただしい朝の様子を思う帰すと気が進まなかったのですが、思い切って自分のお弁当を作ってみました。 

思い返すと、私のお弁当は学生時代母が作ってくれていました。私がお弁当を作っていた時は息子たちのためでした。(なぜかその時ついでに自分のお弁当も、とはなりませんでした。卵焼きを3人で分けるとややこしいと思ったような気がします。) 

 自分のためだけに作ったお弁当は、普通サイズのお弁当箱に卵焼きと焼き物、付け合わせ、梅干しと、ご飯には塩昆布。以上。 

おや?と思うほどあっけなく、まるでおもちゃのお弁当を作っているような気分になります。 

でも、そこに炊きたてのご飯を曲げわっぱのお弁当箱に入れたとたん、とても上等のお弁当になりました。ちょっとおこげが入ってもその方が美味しそうです。 

炊きたてのご飯の美味しさがそのままふんわりと収まり、冷めても炊きたての美味しさが味わえるような気さえします。 

入れ物を変えるだけで、美味しくなる。 

不思議な体験が面白く、しばらくお弁当作りが続きそうです。 

お弁当

ドクターチェア

 仕事先で道を尋ねるついでに入ったお店が 

骨董品を扱っているお店でした。 

店主のご年配の方は道を教えてくれた後も、その町の昔いからのことをいろいろと教えてくれました。 

お店のなかをくるくると回っていると、ふと木製の懐かしいカタチの椅子が目につきました。 

木の部分を丁寧に磨き、椅子の張地を新しく斬新なものに張り替えてあり、なんともいえない可愛らしさがあります。肘付きで、腰かけると、くるくると回転します。 

座面の高さも変えられます。 

現代のビジネス用チェアのようにレバーのワンタッチで高さ調節できるわけではなく、椅子の座面をくるくると回して高さ調節します。 

それがまたなんとも良いのです。 

聞けば、大正時代に新潟の方でお医者様が使っておられた椅子とのこと。 

新潟から、沖縄、そして神戸に。 

多くの人たちの健康を守ってきたお医者様を支えた椅子です。 

大切に使わせていただこうと思います。 

古いものがひとつあると、空間の空気感が変わりますね。 

骨董品

こんにちは赤ちゃん

 『こんにちは赤ちゃん』という歌が随分昔に流行りましたが、いいフレーズだなぁと改めて思います。 

実は最近、周りで赤ちゃんがどんどん生まれていて、とっても幸せな気分なのです。 

自分の子育て期を振り返りながら、懐かしいような愛しいような気持ちになるのは幸せをお裾分けしていただいているような気持ちです。 

ちょっとしたプレゼントを選ぶのも、小さな品物を見ては顔がほころび、可愛らいい色使いを見てはまた顔がほころぶ。 

キリがありません。 

何を喜んでくれるかなぁと想像しながら品物を選ぶのも嬉しい時間です。 

家の中も赤ちゃんを迎えるとなるといろいろと見方が変化します。 

鋭角なものが急に気になったり、触りそうな高さが気になったり、硬いものが気になったり…。 

だからと言って、あちこちカバーだらけの家もちょっと… 

そう考えると。シニアの方のための住宅と共通点が多々ありますよね。 

快適でオシャレだけど、赤ちゃんのことや、お年寄りの事が考えられている。 

それはきっと、思春期の難しい時代の子育て期にも有効な家になると感じます。 

『こんにちは赤ちゃん』 

そんな気持ちを忘れずに家づくりをしたいと思います。 

赤ちゃん

おてんとうさま

 小さい頃、お婆ちゃんに見つからないようにおやつを食べようと、従兄弟同士で作戦を練った事がありました。 

「洗濯物を干しに行くとしばらく戻ってこないよ。」 

「え〜、そんな事ないよ。台所と行ったり来たりするもん。」 

「それはお昼ご飯を食べに隣のおばちゃんが来る時じゃない?」 

「そうかなぁ。」 

「今日来る?」 

「知らな〜い。」 

「じゃぁ朝ご飯食べる時に来るか来ないか聞いておけばいいんだ!」 

うまくいっておやつを頬張れて、弾けるように嬉しくてみんなで顔を見合わせてルンルンしていた時、 

「おやつを食べたりしたらお腹がいっぱいになって美味しいお昼ご飯が食べられなくなるよ。」 

「おやつなんて食べてないも〜ん。」 

言い返しながらもみんな笑いを堪えるのに必死。 

その時言われました。 

「お婆ちゃんは見てなくても、おてんとう様はみてるよ。」 

みんな一瞬ドキッ! 

(それ誰? もう見つかってる?) 

『誰も見てなくても、おてんとうさまは見てるよ。』 

近年、おてんとうさまのご機嫌が悪いのか、大雨や、嵐に困る事が多くなりました。 

見られていないと、悪い事をしている人が多くなって、おてんとうさまが怒っているのかもしれないなどと思ってしまいます。自分も胸に手を当てて反省しなくちゃ。 

男の料理

 男性が料理をすると後片付けが大変とかいろいろありますが、それでもいいものです。 

キッチンが良い景色になるとでもいいましょうか。 

お料理教室に通う男性も多くなったと聞きます。特にシニア層には大人気だとも聞きます。 

男性がつくる料理はおおざっぱで大胆な方がいいと思っています。 

女性には重くて大変な鍋とか使ったり、大きなお肉や魚を丸ごとさばくとか、男性ならではのお料理がいいですね。 

多少見栄えが悪くても、味で勝負‼的な感じが理想です。 

料理をしている最中も、ワインやビールを片手にしてくれると一緒に味見と称してつまみ食いも一緒にできますね。 

大きな体に小さく見えるエプロン姿も様になります。 

ん? 

テレビコマーシャルの見過ぎですって? 

そんなことはありません。 

『慣れないけどやれば結構できる!』はカッコいいです! 

(これだけ言えば、週末、晩御飯つくってくれるかしらん?) 

男の料理

お皿洗い

 いろいろあるお手伝いの中で、何が一番好きでした? 

掃き掃除。窓ふき。ゴミ出し。洗濯物を取り込んでたたむ。アイロンがけ。お米とぎ。配膳の手伝い。お皿洗い。食器の片づけ。買い物。靴磨き。運動靴洗い。トイレ掃除・・・・・。 

数え上げるとたくさんあります。 

その分、お母さんにはやることがたくさんあるということですが・・・。 

なぜか私はお皿洗いが大好きでした。 

シャボンを出してごしごし洗い、水道の蛇口から勢いよく水を出して、バシャバシャ洗う! 

水遊びをしているがごとく楽しかった! 

腕まくりして、お手伝いしているぞ感が満載なのも嬉しかった! 

そして、「床をこんなに濡らして!」と叱られて。(笑) 

今、手洗いがとても見直されています。 

身体をウィルスから守るためですが、水遊びをするようにキュッキュッと音を立てて勢いよく洗う手洗いは、やりだすと楽しいものですよ♪ 

日本のテーブル

 食事をしながらふと感じました。 

「日本の食卓って、おもしろい・・・・。」 

何がおもしろいかというと、食器。 

陶器。磁器。木。漆。ガラス。竹。籠。 

なんと、素材の多いことか・・・・・。 

こんなにも多くの素材を食器に使っている国は他にはないですよね。 

陶器にしても、いろいろな地域に根差した焼き物があり、形、色合い、柄、とバリエーションは豊富。ろくろで作ったものもあれば、手ひねりでつくったものもありますよね。 

小さな箸置きひとつにしても、日本の美意識が細部にまで行きわたり、それだけで食卓が豊かになっているように感じます。 

お箸もそうですよね。 

黒檀、紫檀、竹、塗り・・・・・。 

家族がそれぞれ違う色や形の箸を持ち、お茶碗も、それぞれ自分が好きで選んだものを愛用する文化って珍しいのではないでしょうか。 

 そんなことをあれこれ考えて、食器だけをテーブルに並べてみました。 

いやはや、安く買いそろえただけの食器なのに、なんと「さま」になること。 

醤油さし、薬味入れ、お銚子、杯・・・・。 

日本の食卓はコーディネートのし甲斐がありますね。 

日本のテーブル 小川千賀子 ブログ