暑くなると必ずといっていいほど、昔の夕方のことを思い出します。
蝉の声が少し落ち着き、お父さんたちが仕事から帰ってくるのを待つ間、当時の子供たちには割り当てられた仕事がありました。
そのひとつが家の前の水撒き。水色の巻かれた長いホースを水道につなぐと、生き物のようにくねらせながら水を先っぽから弾き出すのを声を上げて楽しみました。思いもよらないところに水を吐き出す水色の動物のようでした。
水玉のワンピースにサンダル履き。サンダルにはねた水と、水にはじかれた地面の土がくるぶしあたりにはね上げてくるのですが、それもチクチクして楽しいものでした。
水をまくと土を炒ったような、芳ばしい匂いが地面から立ちあがり、その匂いは今でも記憶に残っています。
ホースを高々と上げて、空のどこまで届くか試したり、もちろんアーチ型にしてその間をくぐりっこしたり、思いがけず虹ができて歓喜の声を上げたり・・・・・。
地面には、水で土がはじけた王冠の形が残り、
それを踵で踏んで歩くのも楽しいものでした。
たいがい、「もう、いいかげんにしなさいよ~。水遊びするんじゃありませ~ん。」という晩ご飯の匂いと一緒に母の少し怒ったような声がやってきて、水撒きは終わって片づけに入らなくてはなりません。
水色のホースをくるくると回してまとめるのですが、水をちゃんと出し切っていないと次の日が大変。そういえば、わざと水を残して妹が次の日にホースを引っ張ったとたんに水が飛び出し、泣かせた結果、母に叱られたことを思い出しました。
不思議です。こんなことを思い出していると、少し涼しい気持ちになってきました。