スマホ

 いつかの春のイタリア出張でのこと。 

ミラノの宿泊先で、アパートメントタイプのホテルに滞在しました。 

朝、仕事に向かう時、下の階に住んでいらっしゃるマダムと挨拶。 

「ボンジョルノ!」 

ある朝も挨拶をして仕事に向かおうとすると、マダムが手招きしてくれました。 

ご主人の仕事部屋をリノベーションして、ご自宅のもうひとつのリビングルームにするとのこと。 

4ヵ月前にご主人を亡くされ、思い出すとお話の途中でも涙ぐまれてしまうこともたびたび…。 

イタリア語が全く話せない私は、スマホの翻訳ソフトを使ってマダムと会話をしました。 

結果、リノベーションプランを日本から送らせていただくことになりました。 

ミラノの友人に立ち会ってもらい、現場の採寸・ご要望などをヒアリング。 

ミラノを旅立つ朝、マダムは窓から身を乗り出して手を振って、投げキッスもいっぱいして見送ってくれました。 

スマホのおかげで、海を越えて新しい出会いが生まれました。 

ちなみに、マダムとのアポイントは手紙をドアの下からすべり込ませ、お返事も「OK!」の手紙をドアの下からすべり込ませてもらうという、超アナログな方法でした。 

スマホ 小川千賀子 ブログ